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電子化した本は「溶解処分」が必須!!? “自炊代行に関するルール”にユーザーが大反発

電子書籍の閲覧に適したスマホ・タブレットなどが普及したことで、書籍を裁断・スキャンして電子化する「自炊」が急速に広まっている。自炊にはスキャナーや裁断機などの専用の機器が必要で時間も掛かるため、ユーザーが本を送るだけで電子化を代行してくれる「自炊代行業者」の需要も急増中だ。

自炊代行は著者や出版社などの権利者から批判されており、業務差し止めを求める裁判まで起きた。両者の軋轢を解消するため、権利者の不利益にならない業界ルールの概要が発表されたが、その中に「元となった蔵書は、電子化した後、必ず溶解処理などの方法で廃棄」との一文があったため、ネットユーザーの間で物議を醸している。

今年3月、自炊代行を認めるルール作りを目指し、日本文芸家協会などが幹事を務める「蔵書電子化事業連絡協議会(Myブック変換協議会)」が設立。同6月には自炊代行業者4社が「日本蔵書電子化事業者協会」を発足。両者の間で協議が行われ、6月14日に業界ルールの概要が発表された。

その中で「電子化の許諾対象は個人の蔵書のみとする」「電子化は許諾ベースで行うこととし、同タイトルの書籍についても毎回許諾を受けた上で電子化を行う」「裁断済みの本は受け付けない」といったルールの徹底が示された。これらのルールは、あまりユーザーには関係ないことであるが、前述した「原本を溶かして処分する」という決まりは利用者に大きく関係してくる。

自炊代行が正式に認められたことを喜ぶ声がある一方、溶解処分についてはネット上で以下のような反発の声も挙がっている。

「自分で買った本も好きに出来ないとか舐めてるでしょ」
「自炊代行に反対してた作家たちは『裁断された本は正視に耐えられない』とか言ってたけど、溶かすのはいいのかよ」
「権利者側は本当に紙の本に愛情があるのかね?」
「そもそも出版社が電子書籍を充実させれば済む話なのに」

くしくも先日、富士通が本を裁断せずにスキャンできる家庭用スキャナー「ScanSnap SV600」を発表したばかり。業者が非破壊型スキャナーを導入すれば、利用者は電子化したうえで原本をそのまま返却してもらうことも選択できる。利用者には本の「所有権」があり、それをどう扱おうと勝手だと考えるのも当然だ。

これについて、Myブック変換協議会の瀬尾太一氏はIT系サイトの座談会で「本を溶かすのはマスト。非破壊であったとしてもこれは同じです」と断言。さらに「今の日本は、本が飽和しているために本が売れないという側面は否めない。デジタル化と同時に本棚を空けることで電子や紙を問わずに新刊の販売を刺激するという経済政策的な意味がある」と説明している。

電子化した本が物質として消滅すれば、本棚が空いて消費者が新たな本を購入するきっかけになるという理屈だ。このメリットがあるため安い金額で自炊代行の許諾を許可するに至ったとも瀬尾氏は語っている。この理屈の根拠は不明であるが、権利者側が代行業者に歩み寄る条件として溶解処分は必要不可欠だったようだ。

また、ルール概要には「電子化されたファイルが私的利用を超えて外部に流出することがないように安全管理措置を講じる」「電子化されたファイルには一定の情報を付す等の処理を行う」とも記されており、ユーザーに渡ったファイルに何らかの利用制限が加えられる可能性もありそうである。

自炊代行が新たな形でスタートしたことで出版業界に革命が起きるとの見方もあるが、利用者を置き去りにしたルール作りに戸惑いの声があるのも事実。うまく軌道に乗ることが出来るのか、今後の成り行きを見守りたい。(佐藤勇馬)

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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