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警察・マスコミの「IT音痴」を暴いた“遠隔操作ウィルス容疑者”逮捕騒動

昨年起きたPC遠隔操作事件でIT関連会社社員の片山祐輔容疑者(30)が、威力業務妨害容疑で警視庁などの合同捜査本部に逮捕された。当局の取り調べに片山容疑者は否認しているが、インターネットの接続記録などの解析が進められており、捜査関係者は「過去の余罪も含めて全てを明らかにする」と意気込んでいる。

一連の事件では、ウイルスに感染したパソコンなどが遠隔操作されて無差別殺人などの犯行予告が書き込まれ、無実の4人の男性が誤認逮捕された。また、都内で開催された漫画のイベントでの殺人予告を書き込んだ疑いも浮上している。さらに、2005年にネット掲示板「2ちゃんねる」にエイベックスの社長らの殺害予告を書き込んだとして、脅迫容疑などで逮捕されていたことも判明。この時に警察に恨みを抱いたことが、今回の事件の引き金になった可能性が指摘されている。

長期化の様相を呈していた事件だが、容疑者が逮捕されたことで全容解明に向けて大きく前進したといえる。だが、同時に今回の事件はIT犯罪に対する警察の無知が露呈した場面も多かった。

前述したように一連の事件では4人の男性が誤認逮捕されたが、警察は遠隔操作ウイルスの可能性に頭が回らず、IPアドレスから犯人を割り出すという手法に固執した。その結果、無実の人達を誤認逮捕し、挙げ句の果てに“自白”させるという失態を犯している。メディアや被害者の家族らは「誤認逮捕を生んだ犯人は許せない」という論調になっているが、実際に無実の人間を誤認逮捕して自白までさせたのは警察である。これを「犯人のせい」と責任転嫁してしまったら、警察は全く反省せず誤認逮捕と自白強要による人権侵害を繰り返すだろう。

また、逮捕の決め手になったのは犯人がSDカードを猫の首輪に仕込み、その周辺の防犯カメラに姿が映っていたことだった。一部報道によると、画像を見た捜査員は「これで通常の捜査手法が使える」「いよいよ自分たちの出番だ」と気合が入ったという。警察は複数の海外サーバーを経由した匿名化ソフトによって発信元特定に手間取っており、防犯カメラの映像がなければ逮捕には至らなかった可能性が高い。ネットを駆使した犯罪の捜査において、警察は手も足も出なかったという現実は認めなければならないだろう。

さらに今回の事件に関しては、メディアの姿勢にも批判が起きている。2月10日、捜査員が片山容疑者の自宅に入ったのは午前6時20分ころだったが、その約2時間前にNHKなどで「都内の30歳男に逮捕状」という速報が流れた。もし、片山容疑者が本当に犯人であれば、この情報漏洩によって事前に証拠隠滅する時間ができてしまったといえる。また、片山容疑者の逮捕前の行動をマスコミが追っており、警察からリークがあった疑惑が浮上。都内の猫カフェで猫と戯れる片山容疑者の姿が何度もテレビで流されているが、これがマスコミによる「盗撮」であったとも指摘されている。一時は猫カフェ側が映像を提供したとも疑われていたが、ネットメディアの取材で店側は否定。マスコミが店に潜入し、片山容疑者を盗撮していた疑惑が強まっている。

これだけでなく、朝日新聞が事件記事で「『ソースコード』と呼ばれる遠隔操作ウイルスのプログラム」などと記し、マスコミのIT知識のなさも露呈した。さらに、一部スポーツ紙は「やや小太り。連行される際はフードをかぶり、下を向いていた。いかにもオタクという風貌だった」 と片山容疑者の風貌を報じ、なぜかオタクに対する悪意を感じさせる報道をしている。

一連の事件は単なる犯罪という枠を超えて、警察の捜査能力やメディア報道の在り方といった問題を浮き彫りにしたといえる。様々な波紋を広げた今回の事件の動向に、引き続き注目していきたい。(佐藤勇馬)

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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