コラム

Twitterユーザーは自粛ムードを吹き飛ばせるか?

 

11日に発生した東日本大震災。

 

地震発生直後に携帯電話の通話ができなくなったことで、ネットやスマートフォンが存在感を発揮し、節電を呼び掛ける「ヤシマ作戦」などが発祥したTwitterが脚光を浴びた。Twitterでの災害情報の拡散や、一部のジャーナリストや識者がネットで独自の情報を発信したことにより、ネットが既存マスコミを超えたとする意見もある。

 

しかし、ネットを通して人間の変わらない愚かさや業が見えたのも事実である。

 

 

Twitterは以前からリツイート(RT)機能による伝聞形式のデマが流れることが不安視されていたが、危惧されたとおり「ガスタンク火災によって有害物質を含んだ雨が降る」「自衛隊が支援物資を募集している」という善意によって拡散したデマや、「精液を飲めば被爆予防に効果がある」という中国で流れたトンデモなデマまでが拡散された。

 

政府や東電、原子力保安院の対応や発表の遅れもあり、公的機関や大手マスコミに対する信頼が崩壊したことも、ネットユーザーの心理に大きく作用しているだろう。この状況は、関東大震災でデマが流れた頃と、ほとんど変わっていない。むしろ、安全圏にいる人間までがネットによって手軽に情報を拡散できるため、昔よりもデマが増加したといえる。

 

拡散する人間の多くは、善意や正義心によって情報を伝達しようとしている。だからこそ「自分は正しいことをしている」という意識が強まり、冷静な視点が持てなくなる。善意や正義ほど暴走しやすく、自分の行動に酔った人間の目を曇らせる。Twitterなどのソーシャルメディアを既存マスコミ以上のものにするには、情報の質だけでなく「善意や正義の怖さ」を意識するべきだろう。

ソーシャルメディアは問題点も多いが、非常時ほど一方向に流れがちな世間の動きに対して反対意見が挙がるという点は、スポンサー圧力や責任逃れを意識して足並みを揃えたがる既存メディアにはない長所と言える。

 

震災の状況を鑑みてイベントの自粛などが相次ぎ、世間は自粛ムード一色。28日に東京でサクラの開花宣言が出されたが、上野公園や井の頭公園などの花見の名所が、宴会の自粛を呼び掛けている。被災者の心情を考えれば、花見で浮かれるべきではないという意見も分かるが、Twitterでは「自粛によって経済が回らないことこそ危険」という声が多く、主流意見といってもいいほど。

 

ただでさえ不況で低迷していた個人消費が更に落ち込めば、株価の下落や放射能汚染を危惧する諸外国の日本からの輸入中断などと相まって、国そのものが没落する。自粛ムードに疑問の声を挙げ、震災以前と変わらない消費を心掛けるのは、国を救う行動になるかもしれない。
ただし、害悪とはいえない自粛もある。

 

4月に統一地方選が実施されるが、被災県では選挙カーを自粛する動きが広がっている。また、計画停電の実施地域では、選挙カーの音を出さないように配慮するという動きもある。

 

あのムダに候補者名を連呼する“騒音”が消えるだけで、国民に今以上のストレスを与える事態は避けられるだろう。むしろ全国に広がってほしい動きであり、ずっと続けてほしい自粛である。

 

 

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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