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「自炊」を敵視する出版業界は音楽業界と同じ衰退の道を歩む!!?

東野圭吾、五木寛之、藤子不二雄A、里中満智子ら人気作家、漫画家122人と講談社や集英社など出版社7社が5日、電子化を目的に書籍の裁断やスキャンをする“自炊”の代行業者約100社に対して質問状を送付した。

個人的に自炊をする場合は著作権法で認められている「私的複製」にあたり、当然ながら違法性はない。だが、著作権法では「“使用する者が”複製することができる」と定められているため、複製を代行するのは著作権侵害にあたり、海賊版に流用される恐れも高まると出版社側は主張している。いわば、法的訴訟に出る前の最後通告といった意味合いがあるのだろう。

ネット上では「合法の私的複製を手伝うと違法って意味が分からん」「既得権益を守りたいだけでは」「それより電子書籍のラインナップを充実させろ」といった厳しい意見も上がっている。確かに、出版社が紙媒体と同時に電子書籍としても作品を販売し、電子版を欲しいユーザーが正規ルートで購入するという図式が最も理想的といえる。だが、電子書籍業界は紙媒体に比べて商品が充実しているとは言い難く、各社が競うように自社フォーマットをつくってバラバラの形式で配信しているため、使い勝手も悪い。

電子書籍の閲覧に適したタブレットが多く登場し、場所を取らない電子書籍を求めるユーザーが急増しているにもかかわらず、業界が需要に応えられていない状況だ。かといって、電子化すれば簡単に利益が出るといった状況までは市場が成熟しておらず、出版社側は電子書籍に力を入れることに二の足を踏んでいる。
それならば自分で電子化をしたいと思うユーザーが出始めたが、実際に自炊をするには裁断やスキャンといった面倒な作業が多く、その需要に代行業者が目を付けたのも理解できる部分がある。ユーザーにとっても、自分が買った物をどうするかの選択肢の幅を出版社に狭められるのは納得できない。

これと似た問題としては、かつてレンタルビデオショップなどで見掛けたダビングサービスや、近年のマジコン(※ゲームをコピーできる機械)訴訟などが挙げられる。ダビングサービスやマジコンの販売は違法との見方が強まっており、マジコンは2009年に任天堂がマジコン業者を訴えた裁判で「違法」との判決が出ている。

しかし、これらを違法とする根拠は「コピープロテクトを解除する」ことであり、プロテクトを埋め込むことが不可能な書籍の自炊を代行する行為が同じように違法と判断されるかは微妙なラインだ。いわば、書籍という媒体が電子技術の進歩に追い付かなくなった歪みから生じた問題といえるだろう。出版社側は、自炊代行後に客に返却された裁断済みの書籍が大量にヤフオクなどで販売されていることも問題視しているが、これに関しては完全にユーザーの自由であり、出版社が口を出すことではない。

当然ながら、海賊版の横行は許されてはならないことだ。だが、悪いのは海賊版を流通させる一部の悪質なユーザーであり、私的複製をサポートすることまで違法行為にしてしまう考え方は危ういものがある。

「販売不振はファイル共有ソフトのせい」として業界が抱える問題の本質から目をそらし続けた音楽業界は、多くのユーザーからソッポを向かれて窮地に陥っている。出版業界は音楽業界同様の後ろ向きな姿勢で業者を威嚇するよりも、海賊版の流通に対しては厳しく臨むと同時に、ユーザーが自炊をしなくても済むような電子書籍の充実した環境を早く整える前向きな姿勢が必要なのではないだろうか。(佐藤勇馬)

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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