コラム

テレビはさらに退屈になる!!? 完全に悪循環に陥ったTV業界の内幕

7月に地デジ完全移行を終えたテレビ業界。テレビ局が最も不安に感じているのは、移行後の「テレビ離れ」の加速だ。かつては娯楽の王様といわれたテレビだが、嗜好の分散化や不況による制作費の削減に首を絞められ、コンテンツ力も低下している。かつては視聴率40%超えの“お化け番組”が数多く放送されていたが、近年はドラマやバラエティーで20%を超えるのは至難の業。ワールドカップやオリンピックでもない限り、そんな視聴率をたたき出す番組は年に数本出るかどうかという状況を見ても、世間のテレビ離れは確実に進んでいる。

6月には、テレビ朝日のプロデューサーがTwitter上で「ついに昨日、19時台の民放は全局、視聴率が1ケタになった」とつぶやいたことが話題になったが、現場の制作者たちも焦りを感じている。

しかし、似たような番組の乱発や、デモ活動にまで発展したフジテレビの韓流推しへの批判にも見られるように、「視聴者が見たい番組」と「局が作りたい番組」の大きなズレは解消される気配がない。

危機感を抱いていながらも、なぜテレビは変わることができないのか。

テレビ局の収入の要となる広告料金は、基本的に視聴率に応じて決定される。ただでさえ不況によって広告収入が下がっているため、各局は制作費の安いバラエティーや、グルメ紹介や工場見学をするような企業とのタイアップ番組を乱発するようになった。何となく視聴者が感じている「タレントがスタジオで騒いでるだけの番組か、メシを食ってるだけの番組ばかりになった」という感覚は、テレビ界の現状と一致する。さらに、安い制作費すら出したくないような時間帯には、フジテレビやTBSのように権利の安い韓国ドラマを乱発することになる。これに飽き飽きした視聴者がテレビから離れ、視聴率が低下すれば広告収入も下がり高品質な番組は作れなくなるという悪循環に陥っている。

局側も広告収入に見切りをつけ、不動産業やイベント企画、映画制作などの「放送外事業」に乗り出しているが、自局が経営する複合施設や主催するイベント、制作した映画などを公共の電波を使って、これでもかというほど宣伝している。この電波の“私的流用”だけでも問題があるが、当然ながら番組を使った宣伝は視聴者にとって面白いものではなく、目先の利益にとらわれて局が自らテレビ離れを促進してしまっている状況といえる。

また、デジタル放送への完全移行は「電波の有効利用」を目的に国策として行われたが、アナログ放送の終了によって空いた「電波跡地」には、電波法で放送サービスにしか使えない帯域「ホワイトスペース」がある。利用価値が高いといわれる「ホワイトスペース」だが、キー局が中心となり、その帯域をワンセグを使ったケータイ向け番組で埋めるという計画が進められている。

この計画の裏には、テレビ局が放送業界への新規参入を防ぐ目的がある。国から与えられた放送免許と電波帯域がなければテレビ放送はできないが、空いた帯域があれば新規参入する業者が出てくる恐れがある。そのため、有効利用できるはずの帯域をケータイ向けの新番組を作るという名目で先に埋めようとしているのだ。

また、与謝野馨経済財政担当相が復興財源としてケータイ各社の電波利用料を引き上げることを検討していると語ったが、携帯電話会社は既に年間500億円以上の利用料を支払っているにも関わらず、テレビ局は全社合わせて50億円程度しか支払っていない。当然ながらケータイの電波利用料が引き上げられれば、われわれ利用者の携帯料金に跳ね返ってくることは確実だ。しかし、同じ電波を扱う業種でありながらテレビ局だけを優遇し、ケータイを使う国民から財源をむしり取るという政策は道理に合わないといわれても仕方ないだろう。

かつてテレビの影響力が絶大だった頃は「チャンネルを持っていれば勝手に広告費が入ってきた」といわれたが、いまやテレビのライバルはケータイやネットである。テレビは現在、1日の平均視聴時間が5時間半を超える70代以上の高齢者層に支えられているが、20代、30代のテレビ視聴時間は1日平均2時間前後であり(※2010年度NHK調査より)、新しいメディアを使いこなしている層にとってテレビは、単なる選択肢の一つでしかない。この時代に「新規参入さえ潰してしまえば安泰」という感覚は過去の遺物でありながら、決定権を持つ局の上層部の頭には強くこびりついているのだろう。

米国では電波の使用権を競売にかけることで競争原理を生み出す「電波オークション」が実施されているが、電波を独占してきた日本のテレビ局は「利権体質」に蝕まれ、スポンサーや視聴率にばかり目を向けるようになった。とはいえ、いまだにネットの面白いコンテンツは、既存メディアのコンテンツを2次利用している場合が多い。これはネットでお金を集めるシステムが確立されていないために、テレビなどの既存メディアから優秀な人材が移行できずにいることが大きい。だが、これもネット利用者が増加してメディアとしての価値が今以上に大きくなれば、いずれ解決してしまうだろう。

近い将来、ネットへの人材流入や収益システムの完成が実現された時、テレビは一つの大きな役目を終えるのかもしれない。(佐藤 勇馬)

■画像引用元:地上デジタルテレビ放送のご案内(総務省)

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/dtv/index.html

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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